星野裕司著『自然災害と土木-デザイン』(農文協、2022年)が令和5年度 土木学会出版文化賞を受賞しました。
同賞は、土木に関連する出版物で、土木工学・土木技術の発展に貢献し、あるいは読者に感銘を与えることにより、土木文化活動の一環となりうると認められた出版物を対象とし、その著者を表彰するものです。
受賞理由
本書は、土木を「自然と人間の間にあってそれらをつなぐインターフェース」として捉え、このインターフェースのあり方を土木のデザインという視点から実例を通して提示するものである。
土木施設には、人間を自然災害から守る役割がある。一方で、人は土木施設によって常に守られていると、その状態が正常であると見なし、本来の自然が無常であること、さらにはその脅威さえも忘れがちである。言い換えると、土木施設には人間と自然の関係を引き離す一面がある。著者は、この誤謬に陥ることへの危機感から、人間と自然との境界、両者をつなぐ「インターフェース」の重要性を説き、そのあり方を土木のデザインによって適度に調整可能であることを、3つの実例、「曽木の滝分水路」、「白川・緑の区間」、「熊本地震からの復興」を用いて教示する。並行して、土木のデザインの背後にある土木デザイン論、災害論、自然哲学、哲学的技術論などを幅広く論じながらその妥当性を実証する。
以上のように本書は土木のデザインの紹介に留まらず、土木によって人間と自然との関わり方を問いつつ、生生流転する大自然への向き合い方を問う書籍と言える。よって、ここに土木学会出版文化賞を授与する。
自然災害と土木-デザイン
星野裕司 著
2000年代に入り大きな自然災害が頻発している。こうしたなか、これまでのような土木施設が引き続き必要とされる一方で、地域の環境や景観の面から再考する機運も高まっている。本書は、土木を「自然と人間をつなぐインターフェース」ととらえ、デザインを通して、こうした負のインパクトを減らすだけでなく、自然と人間の新しい関係を構築することを目指す。著者自らが関わった豊富な事例に加え、篠原修の土木デザイン論、内山節の自然哲学、ハイデガーの技術論などをふまえながら、土木をデザインすることの意味と可能性を問う。
本書についてのくわしい解説は下記ページをご覧下さい。
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